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COLUMN

旨いもの伝説

ケータイサイト「旨いもの伝説」に掲載していたコラムをアップします。

01八正の寿司
八正の握り寿司
八正の握り寿司

20年以上通っている寿司屋がある。僕が日本一好きな寿司屋。そこのおやっさんと気が合った。絵に描いたような頑固オヤジ。オヤジが立つ定位置がさながらコックピットの操縦席であり、客の皿、厨房の若手の板さんの一挙手一投足にまで目が行き届いていて、手際が悪いとキビシイ言葉が飛ぶ様子は見慣れた風景だった。そこにオヤジが居るという事で店としての全体のバランスが保たれていたし、お客も味は元よりオヤジに会うために足を運ぶような店だった。

昨年久々に暖簾をくぐると、なんだか様子がオカシイ。店内の照明も暗い感じ、なんだか精彩がない。おやっさんが居なかった。おかみさんに聞くと、入院されたそうだ。不治の病。それから1年を待たずにオヤジは逝った。板さんから連絡をもらって、せめてお花でもと思ったがおやっさんの遺志で受け付けてもらえなかった。

おやっさんがそこに居る事で持っていた店が、おやっさんを亡くしてやって行けるのか?先日様子を見に行った。そして目を見張った。活気づいている。おやっさんが居なくなった大きな穴を、おかみさんと若者達が埋めようと必死なのだ。花板さんが、かつておやっさんが居た場所に立ち懸命に仕事をしている。そこに頼もしさを感じる。厨房の若手達も、おやっさん直伝の教えを踏襲しイキイキ無駄無く動いている。フーム!おやっさんがなくなったのはとても寂しく悲しい事だ。しかしトップがすべて仕切って君臨している状況では「下」が育ちにくい。場合によっては萎縮してしまう。おやっさんよぉ!あんたが死んで店がどうなるか心配したけど、ちゃんと次の世代へのレールを敷いて逝ったのだね。これには驚いた。

生前「雑誌にこの店紹介してもいい?」と何度も聞く俺に「それだけはカンベンして」と頑なに取材を拒否し続けたおやっさん。2年程前にどういう風の吹き回しか「アンタが書くんやったらええよ」とようやく言ってくれて、でもその時は俺、紹介するメディアを持ってなくて、今回ようやく書かせてもらったわ。店はよく流行っている。おやっさんが築いた礎の上に、新たな花が咲こうとしている。また大阪に帰ったら、おやっさんを偲びつつ旨い寿司を食いに行くでー!「タチウオのあぶりとカワハギの肝乗せ握ってー!」。

INFO「寿司 八正(はちまさ)」 大阪市中央区上汐2-4-12 電話 06-762-3967 平日17時~23時 土曜16時30分~23時 日曜16時~23時 月曜定休
02ビクトリーのサンドイッチ
ビクトリーのビーフカツサンド

サンドイッチを無性に食べたくなる事があるか?サンドイッチが出て来たら脇目も振らず無心にほうばってしまう事があるか?ノー!ノー!ノー!否!否!否!サンドイッチとはツナギの食であり、小腹が空いたときの一時しのぎで食べるケースが多かった。ところが、ここ「ビクトリー」のサンドイッチは本当に心底満足出来るとても素敵な食べ物なのだ。

俺がこの店を知ったのはまだ大阪に住んでいた20代の頃。車で土佐堀通りを走っていると、なんともモダンな外観の喫茶店を見つけ、入ってみたら大当たりだった。先代がやっていた店だ。17年前からは近くに店を移し営業しているがその味はずっとオイシイ。先代が大正から昭和に変わる頃、洋食のコック目指して田舎から大阪に出て来て、生まれて初めて喫茶店に入り、生まれて初めてサンドイッチを食べ「こんなウマイものが世の中にあったのか!」と心底驚いて、修業の末に自分の店を始めたのが昭和3年。開店当時は3種類だったメニューも研究に研究を重ねて20種類以上に増え、戦争も乗り越え、今では先代の伝統を2代目夫婦がしっかり受け継ぎ、ビジネス街のみんなの舌を満足させている。

イヤ、俺もね、先代の大将同様最初「ビクトリー」のサンドイッチを食べたとき「こんなにウマイもんがあるんかいな!」と思ったもの。以来大阪でライブがある時はテイクアウトで頼んだり(電話で頼んでおくのもOK)、先日もフラッと訪れてみると相変わらずのオイシサで、その日は「ビーフカツサンド」を無心に頬張った。種類が豊富なのでいつも目移りしてしまう。「カトルフィッシュ(イカ)サンド」「シュリンプヤサイサンド」「ローストビーフサンド」もいいな。こうして文字に記していると尚更、今すぐ食べたい「ビクトリーのサンドイッチ」に僕はずっと負けっ放しだ。

INFO「ビクトリー」 550-0002大阪市西区江戸堀1-23-31 06-6441-4147 営業時間 平日7:00~19:00 土曜8:00~17:00 日祝休
03ピカイチ
ピカイチ風冷シャブ
ゴボウと細切り肉の炒め

名古屋と言えば「ピカイチ」だ。もう20年は通っている。「オリジナル中国料理」と言うだけの事はあって、ここにしかない味が充実している。ピカイチに似たような味にも全国的に出会った事がないのがスゴい!お気に入りは「ゴボウと細切り肉の炒め」歯ごたえジャキジャキ!香ばしく紹興酒にもビールにもよく合う。ここにしかないわー。「ピカイチ風冷シャブ」も、たまらんなあ。キューリと豚肉と味噌が三者で仲良く手をつないでいる。「大根と白肉の煮込み」もハズせんなあ。トローリとあんかけ状の薄切り大根と豚肉を取り皿に入れたらそこは「純白」の世界。そこに辛味噌を少々タラし「赤」を入れるとまるで日の丸!中華料理で「ニッポン、チャチャチャ!」。

あとは「餃子」を頼んで、とにかく何を食べてもオイシイからメニューを見て興味あるのを頼みなさい!そしてシメは「チャーハン」と「ピカイチラーメン」。ラーメンは辛さが調節出来るので、少々辛めを頼んだ方がチャーハンと良く合うと思うよ。

ドラゴンズファンが集まるという事でも有名で、中日が勝った日は大盛況!名物のオヤジさんが一昨年急逝されて、とても寂しいけれど、残ったオカミさんと息子さんでシッカリ店の雰囲気と味を守っている。名古屋に行ったら、とにかく「ピカイチ」。

INFO「オリジナル中国料理」ピカイチ」 〒464-0850 名古屋市千種区今池1丁目14-5 電話 052-731-8413 営業時間 18時~1時半 定休 毎週日曜日
04水餃子の店 ハルビン
ハルビンの水餃子
豚肉とネギ炒め

大阪のJR茨木駅西口にある「水餃子の店 ハルビン」に、俺はデビュー直後から20年以上通っている。茨木は地元で実家があるので、今でも年に数回は暖簾をくぐる。「ハルビン」のカウンターに座ると「あー、帰って来たんだなぁ」と実感するのだ。数年前、創業者のオッチャンとオバチャンが続いて亡くなられ、とても寂しかったが、今は息子さんがシッカリ跡を継いでいる。

先代が本場で習って来たという水餃子は、弾力ある皮に包まれ「トゥルン!」と口に入って来て、徐々にアンと皮が馴染んで、程よく食道に流れて行くのがオイシく楽しい。ニンニクをつかわないシンプルかつ奥深い味だ。「餃子」という種類の食べ物に中で「ハルビンの水餃子」は明らかに他より「品格」があると俺は感じる。イヤ、けっしてエラソウでタカビーなのではない。あくまで大衆的ではあるが、「オーラの泉」的に言うと「前世は貴族であり武士だった」みたいな餃子なのだ(どんな餃子や?でもそんなカンジ)。別格ちゅうこっちゃ。

「豚肉とネギ炒め」も相当ウマイ。九条や下仁田などのブランドネギではなく「普通のネギ」に「普通の豚肉」なのだそうだが何故にここまで旨い?火加減なのかなぁ?調味料なのかなぁ?ここにしか無い味で「ハフハフ」で「シャキシャキ」で「ムニュムニュ」で紹興酒にとてもよく合う。あー、食いたい!今すぐ食いたい!地元茨木を代表する「水餃子の店ハルビン」に行ってみよし!水餃子は取り寄せも出来るから、食べてみよし!

INFO住所 〒567-0032 大阪府茨木市西駅前町8-5 電話 072-623-2500 営業時間 火~土 18:00~24:00(L.O.23:30) 日 18:00~23:00(L.O.22:30) 定休日 月曜日
05インデアンカレー

25歳の時に初めて食べてから20余年。我が青春の味であり、僕の中の「カレーランキングダントツ1位」の座が揺るがないのが「インデアンカレー」だ。関西に8つの直営店があり、大阪に帰った時は必ず食べに行っていた。最初は甘く、食べ進めるうちにどんどん辛くなり、食べ終える頃には頭皮から汗が吹き出す愛しのインデアンカレー。その58年の歴史を背負って2006年11月、ついに東京に進出。あーありがたやありがたや。これで日常的にインデアンカレーが食える!

大阪にはすでに土着しているので、インデアンを食すマナーは定着していて、カウンターに座り、出て来たと同時に無言でさっさと食べるのが常識だが、東京のお客さんはけっこう談笑したり、ビールを飲んだりしながらユルユル食べる姿が新鮮であり興味深い。俺はいつも「ルー大盛り、ごはん少なめ、卵」と注文。そんなのメニューに載ってないので、何度か通って自分の好みの量を把握してからいろいろ試して見るべし!「ルーダブル」とか「スパ大盛り」とかいろいろあるからねえ。20年以上通っている俺ですら、最近知ったのが「全卵(ぜんらん)」。通常「卵」と頼むと黄身のみが乗っかってくるのだが「全卵」は白身も込みで出て来る。辛さが苦手な人は「全卵」で行こう!

今までにいろんなところにインデアンカレーの事を書いたし、数百回は食べていると思うが、こうして今、原稿を書いていても、その特別な味を思い出し、今すぐ食べたくなる。今から行ってこよう!行くしかない!

INFO丸の内店 東京ビル TOKIA B1 03-3216-2336
06デミカツ丼
だてそばのデミカツ丼

日本一のカツ丼は岡山にある。40代に入った頃からめっきりカツ丼を食う回数が減った。天丼も含めて、出来るだけ「揚げ物」は避けよう!という志向の「食」を選びがちな毎日。しかーし!「だてそば」のカツ丼だけは別格で俺の舌とハートを離さない。おそらくこれからもずっと、老人になったとしても。もう15年以上、岡山に行くと気づいたらカウンターに座っている俺が居る。

通常、カツ丼とは、カツとタマネギなどを卵でとじてモノが、ご飯に乗っかって来るモノである。群馬や新潟にはカツとキャベツの上にソースがかかって出て来る「ソースカツ丼」もある。俺が日本で一番好きな「だてそば」のカツ丼はデミグラスソース。え?ドミグラス?いやいやデミグラスの方がシックリ来る。カリッと揚げたてのカツにからんだ香ばしいデミグラスソース。通称デミカツ丼。真ん中に卵を落として食べる。なんちゅう旨さだ!「だてそば」の名前でわかるように中華そばも名物で、これがまたウマイ!両方食べたい人には、それぞれの「小」のセットもあるし、カツ丼は普通で中華そばが「小」、中華そばが普通でカツ丼が「小」という選択も出来る。

先代の名物ばあちゃんからしっかりバトンを引き継いだ「かあちゃん」の明るい人柄に惹かれて店に通う常連は星の数。そこに「かあちゃん」が居て、かあちゃんの手によってカツが揚がり、中華そばが湯がかれる。カウンターの中のかあちゃんは、とても神々しい。ここにもやはり、しかるべき「人」が居て、しかるべき「味」が根付いている。

INFO「だてそば」 住所 岡山市表町2-3-60 電話 086-222-6112 営業時間 11:30~19:00(L.O) 土日祝 11:30~19:30(L.O) 定休 火水
07白トリュフとふぐ白子
白トリュフとふぐ白子

白トリュフとふぐの白子のコラボレーションって、あーた!東京はおそろしか、とこよねえー。世界中でこれほど贅沢な食べ物がありますか?しかも白トリュフとふぐの白子がともに旬の41日間しか食べられない。あー!オソロシ!あー!たまらん!

「浜藤」のオーナー乾さんは、食に関しての研究熱心さと言ったら並大抵ではない。元々「串の坊」の三代目という立場にあるのだが、22年前に大阪を離れ、東京の人に「ホンマにウマイてっちりを!」の志を抱いて上京。最初の数年は店に閑古鳥カーカー鳴くも、その後一気に盛り返し、今や日本を代表するふぐの名店に。乾さんとは同郷(大阪府茨木市)という事もあり、六本木出店時からチラホラと通ってはおりましたが、ここ3年ほどさらに急接近で、みんなで食事をしたり、バルセロナやソウルに「食旅行」に行ったりの仲。

昨年は俺、下関・門司地区のキャンペーンキャラクターを担当していて、イメージソング「カモン!関門行進曲」(非売品)というのを作ったワケ。その歌詞はトルコ行進曲に乗せて「ふぐ食べよ!ふぐ食べよ!・・・・」というモノ(下関だけに)で、せっかく「ふぐ関連」の唄が出来たのだから「乾さんにもプライベートの『遊び』で『浜藤てっちり行進曲』作ってあげますわ!」ということで、まんまカラオケに「浜藤」に関する様々なこだわりを乗せて唄に凝縮してみたよ。

さあ、今シーズンも行って来たよー!白トリュフとふぐの白子、今年は「イラン産天然キャビア」もあるでー!それに良く合うシャンパンや白ワイン!あー!あー!これは「王様の食べ物!王様の飲み物!」この世に生まれたシアワセ!東京の街でこれらのモノを口に出来るシアワセを噛み締めながら、六本木の夜は更けてゆくぅ~!(しょっちゅう食べたら人間ダメになるよ)

INFO住所 〒106-0032 東京都港区六本木7-14-18 7&7ビル2F 最寄駅 地下鉄日比谷線 都営大江戸線六本木駅 徒歩1分 TEL 03-3479-2143 営業時間 12:00~23:30(ラストイン22:00) 定休日 シーズン中無休(12/31~1/2迄を除く) ※4月~9月は天然ふぐシーズンオフの為休業
08禁断のカニとの再会
松葉ガニ

20代の頃からカニが好きで、自分の金で食えるようになった事も嬉しく、ひたすら食べ続けて15年ほど経った時「カニを食べた時に限って体が錦鯉みたいにマダラになって心臓が少しドキドキする」と気づいた。お酒と共にに甲殻類を食べるとそういう状態になるのだとようやく自覚したのだ(するのに時間がかかったー)。以来カニとは距離をおいてきた。口にしなくなってからもう7~8年だ。

さて先日、旅番組で「冬の城崎温泉の旅」という仕事が入って来た。え?これはカニを外すワケにゃーいかないシチュエーションではないか。ま、お酒を飲まなければ大丈夫!と、おそるおそるやって来たのは5万坪の庭園を誇る名宿「西村屋ホテル招月庭」。客室から眺める奥行きある風景が素晴らしく、ロビーから見える滝の表情や、露天風呂に身を沈めた時の視界、そのすべてが計算し尽くされており、俺も「庭に感動する年になったか!」と思いつつ湯につかりながらカニとの再会の時を待つ。

さて、膳に現れたのは地元津居山港に水揚げされた見事な松葉ガニの王様。本当に久しぶりのご対面なのだ。まずは茹でガニの足に強引に指を入れ身を分離させ一気にほおばる。おっ、おー、懐かしい。あー、こんなんだった。ウ、ウマイ!数年遠ざけていた反動か、カニの魅力にどんどん吸い込まれてゆく。カニミソってそうそうこんなんだった!刺身はこんなふうにプリプリしてて、カニスキはこうだったハフハフッ!焼きガニは香ばしく、また全然風味が違う!料理法によって表情が七変化!ムシャムシャムシャムシャパクパクパク!酒さえ飲まなきゃこっちのもん(どっちのもんや?)。昔の恋人と再会した気分だ(少しエロティック)。そしてやはりコヤツは相当魅力的な食べ物で、多くの人を虜にするのがよーくわかった。もう、どうにでもしてー!冬の山陰に人が押し掛けるのは道理だ。

INFO西村屋ホテル招月庭 住所:〒669-6101兵庫県城崎温泉 TEL0796-32-3535 FAX0796-32-4457 http://www.nishimuraya.ne.jp/shogetsu/index.html
09新大阪・新横浜の定番駅弁
水了軒の八角弁当
崎陽軒の横浜チャーハン

元々は関西中心に活動していた。15年前まで大阪にも部屋があり、東海道はもう何百往復したか数えきれない。食事もままならず新幹線に飛び乗る事も多かったので「駅弁」は貴重な一食となる。新大阪で売っている駅弁も、ほとんど食べ尽くしているが、今までもっとも多く食べた駅弁と言えば「水了軒の八角弁当」だ。この幕の内のバランスの良さは日本一で、食べていてとても楽しい。関西の味付けなので、どれもこれも薄味で素材の良さが生かされている。20種類近い「オカズ」を少しずつ味わいながらご飯を食べる。ご飯もオカズも「冷めている状態」でオイシク食べられるように計算され尽くしているのがウレシイ。20代の頃に初めて食べた時のイメージをずっと継承していて「駅弁を食べる」という行為が「あの頃を振り返る」という思いをも引き出して、進行方向左手に望む北大阪の山々の景色に四季を感じながら、今日も「八角弁当」を口にする。

反対に東京から大阪に向かう場合。以前は東京駅のデパ地下で弁当を買う事が多かったが、近頃は新横浜の駅を利用する場合が多いので新横浜と言えば「崎陽軒」という事になる。ここの弁当もほぼ制覇しているが、俺のナンバーワン駅弁は「横浜チャーハン」だ。シウマイ(シューマイではなく崎陽軒の場合あくまで「シウマイ」と表記)が2つ入っているニクイ奴!冷めたチャーハンの飯粒の状態がとてもドライで食べていて心地がヨイ!第三京浜の港北インターを降りる頃になると無性に「横浜チャーハン」が恋しくなる。スプーンで食べるのも楽しいし、量的にも少し少なめで程よく、小田原あたりまで至福の時間を過ごしている。

10下田・いし塚
いし塚の上鴨そば

そば屋には「フラリ」と入るものだ。計画性なくあくまで「フラリ」と入り、そばをたぐって長居をせずに勘定をして「スルリ」と店をあとにする。そんな店が何軒かある。中目黒の「驀仙坊(ばくざんぼう)」、学芸大の「夢呆」、恵比寿の「玉笑」、白金の「利庵」、地方に行ったら行ったで信州白馬の「そば祭り」の時期の新そば、山形の「板そば」、新潟じゃ「へぎそば」、山陰は「出石そば」、いつも「フラリ」と入って「スルリ」と出てくる。

伊豆下田にここ数年ちょくちょく遊びに行くのだが、ここでは「いし塚」。最近は大晦日に行った。一年で一番そば屋が混む日なのだが、午前中に滑り込んだので、そんなに待たずに済んだ。ウマイのは「せいろ」「そばがき」「上鴨そば」。冷たいそばはコシがあり、率先して喉をくぐり抜けるカンジ。俺は、暖かいそばというモノに今まであんまり興味を示さずに生きてきたのだが、ここの「上鴨そば」は別格だ。芳醇で包容力あるダシに、力強く、でもやさしい「鴨肉」と「ネギ」が浮かぶ。そこに独自の調合の「七味」を振れば、なんとも複雑でシアワセな味覚が果てしなく絡まりつつ広がってゆく。東京から3~4時間、下田につけばまず「フラリ」と「いし塚」の暖簾をくぐりたい。

INFOいし塚(いしづか) 下田市敷根4-21 0558-23-1133 定休 水曜日 営業時間 11:00~16:00
11澤屋まつもと
スッポン鍋

長年「日本酒」の良さが理解出来なかった。と言うより、若い頃、安い日本酒をムチャ飲みしてヒドい目にあったという印象から脱却出来なかったのだ。でも数年前から「日本のメシにはやはり日本酒だ!」と、ようやくここにたどり着いた。吟醸酒や純米酒、生酒などの違いもわかるようになってきたし、俺も大人になったモノだ(シミジミ)。酒単体としては、大吟醸など魅力的なモノは多々あるが「料理を引き立てる」という意味において「澤屋まつもと」をしのぐ「酒」に出会った事がない。けっして前面には出てこず、食事を生かす最高の日本酒なのだ。京都伏見で創業以来200以上の伝統のその味。揺るぎない自信を感じる。

現在の「まつもと」の後継者「松本兄弟」の三男「松本庄平」さんは料理人で、横浜に居を構え「まつもと」を全国に広めるべく「企画室長」として全国を飛び回っている。「和」の料理人なのだが、松本さんの作る「スッポン鍋」には定評があり「まつもと」を広める目的で互いの気心ヨシ!となれば出張で腕をふるってくれる。かつては「日本の電気産業の父」と呼ばれた人や、様々な名作を世に送った「映画監督」なども松本さん御用達で、何度も自宅に呼ばれたそうだ。そんなスペシャルなスッポン鍋を年に何度か口にする機会があるのがありがたい。俺も大人になったモノだ(もうええか)。スッポンのスープに「まつもと」を流し込みクイッとやれば「あと100年くらいは生きるぞ!」という気になってくる。

INFOホームページを見れば一目瞭然 http://www.sawaya-matsumoto.com/
12赤のれん
赤のれんのラーメン

好きなラーメンをひとつ挙げろ!と言われても、それは無理な話だ。体調や気分によって、食べたいラーメンは変わってくるし、地方に行ったら行ったで「来たからには食べとかないと!」という思いで店に足を運ぶ事もある。

今まで、歩んで来た道と、そのかたわらにあった味というのも重要だ。例えば俺は20代前半の頃、よく京都のライブハウスで唄っていて、リハーサルが終ると「天下一品・北白川本店」に行った。なんという旨いラーメンがあるのだ!と驚いた。あの、ドロッとした白濁したスープは、青春の味なのだ。まだ「ナニモノ」でもなかった俺が「ナニモノ」かになりたい!と強く願いながら口に運んだ「夢に向かう切符」的な役割りを果たしたラーメンなのだ。今や全国展開している「天下一品」を時々体験する事によって、初心に帰る事が出来る。

20代後半、東京でテレビのロケ番組を担当していた時、ロケ帰りにラーメン好きのディレクターにいろんな店に連れて行ってもらった。その中で速攻気に入り、あれからずっと通い続けているのが西麻布の「赤のれん」だ。博多の本店でラーメンの作り方を教えてもらって、東京に店を出して、もう30年になるのだという。西麻布を「霞町(かすみちょう)」と呼んでいた時代から、ずっとそこにあるのが凄い。30年の間、変わりゆく風景を見続けて来た風格。揺るぎのない自信を感じる。このトンコツは記憶に残る味で、界隈を通ると「赤のれん」のラーメン食いたい!という思いが脳裏をよぎり、払いさる事が出来ない。博多の極細の平打ち麺なので、茹で時間も短く、グズグズ食べているとすぐに伸びてしまうのもイイ。こうして原稿を書いていても「赤のれん」の味を思い出し、腹がグゥ~と鳴るのが旨い証拠だ。

INFO住所:港区西麻布3-21-24 第五中岡ビル1F 電話:03-3408-4775 営業時間 11時~翌5時 日曜定休
13かっぱ
かっぱの牛肉煮込み

今や「駒沢」と言えば高級住宅地。「コマザワンヌ」と呼ばれるセレブが、犬を散歩させている、というイメージが定着している(実際本当に犬を連れている人が多い。犬同伴で入れる店や、犬グッズの店が軒を連ねている。日本一『犬密度』の濃い地域かもしれない)。しかし、元々は田園地帯だった。1964年のオリンピックによって、一気に様子が変わったのだ。

オリンピック開催から、さらに遡る事14年、「かっぱ」の歴史はすでに始まっていた。牛肉の煮込み一筋57年。当時、今の246は路面電車の「玉電」が走っていて、最初は、多摩川の砂利を渋谷に運ぶ為に敷かれた線だった。その時代から流れる「かっぱ」の伝統。近くに駒沢大、日体大があるので「青春の味」として記憶に残っている人も多いだろう。「よく、先輩に鍋を持たされて買いにいきましたー」という声を良く聞く。あくまで「モツ」ではなく「牛肉」の煮込みだ。コンニャクと豆腐に絡んだ味噌ベースのその味を、ひとたび思い出したら食べずにはいられない。気付いたらカウンターに座っている。

店内で私語を交わす人は居ない。3交代制の「二代目オヤジさん」「おかみさん」「三代目息子さん」の所作に無駄は一切なく、黙々とメシをよそい、煮込みを注ぐ。客はひたすら煮込みをおかずにメシをかっ食らう。「コマザワンヌ」にゃー、似合わない。「男の世界」ンー、マンダム! そんな緊張感が窮屈な人は、タッパーでのテイクアウトもやってくれるので、裏口から「3人前!」などと注文して、持って返って、家でワインでも飲みながら味わうのもヨシ。

INFO情報はすべて以下のサイトに http://nikomi-kappa.com/index.html