セルフライナーノーツ
セカンドアルバム「日常~COME'ON 超B級娯楽音楽~」 1986.7.21リリース
… ブックレットより …
ライナーノーツ&ミュージックビデオロケ地構想
筆:鴻上尚史さん & 嘉門達夫
嘉門さんのこと
劇団「第三舞台」主宰 鴻上尚史
嘉門達夫さんは、佐野元春さんに似ている。と、僕は一貫して言い続けている。サングラスをかけた横顔など瓜二つである。実際、僕は「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」を、佐野さんが歌っていると思い込んでいて、佐野さんという人のレパートリーの広さに驚いていたのだ。そんな誤解も、嘉門さんとの出会いで解消されたが、素顔を知るにつけ、やっぱり佐野元春さんとそっくりだと思ってしまうのである。
話はそれるが、ぜひ一回、佐野さんばりのニューヨーク・ビデオ・クリップを、アミューズにつくってもらいたいものだ。嘉門さんのLPは、堂々たるミュージシャンが参加しているので、すぐできると思う。ニューヨークのタイムズ・スクエアで、「アホが見るブタのケツ」を口ずさみながら歩く、嘉門達夫。これは絶対、絵になる。なんたって、アミューズですもん。必ずやってくれるはずです。劇団をかえている事務所なんて正気の沙汰じゃないですもん。商売を考えてる並の事務所じゃできませんて。
さてさて、話は元に戻って、僕は嘉門さんに、非常に期待している。人柄は、参加ミュージシャンの顔ぶれを見れば、すぐ分るから言わずもがなで、めざす方向に期待している。
「川口浩」の時も「ヤンキーの兄ちゃん」の時も、そしてこのLPも、僕は自分の仕事を忘れて、ニコニコしてしまうのだ。そのとーり、うんそのとーり、ニコニコとそして深くうなづくのである。
ところどころに、僕流の曲の解説を入れてみた。(★印)
ほっといてくれよ!
新田一郎さんアレンジ 演奏はTOPS 彼らがITACHIとして関西で活動している時に知り合って 一緒にライブをしたりバックをやってもらったりした関係 アミューズから独立した新田一郎さんに繋げてメジャーデビュー
人間というのは、他人にひと言言う事によって、自分の立場を守ろうとする生き物なのです。もう、そんな事、ほっといてくれよ!と思う事がいっぱい。歌詩にはありませんが、トイレに行く時にわざわざ、「しょんべんしてこ!」とか「ウンコしてこ!」などと、宣言してからトイレに行ってみたり、座敷へ上ると、「誰や?足クサイの!」とか、突然「お前、屁、こいだんちゃうか?」などと、指摘してみたり、自分が言葉を発する事によって、我が身を守るのです。
昔から、京都で一緒にやって来た、ITACHI改メTOPSのメンバーが、バックをやってくれたのは、ほっといてくれよ!とは言い難い嬉しい事実です。
★ほっといてくれよ! 人間が人間関係から逃避し始めたディスコミュニケイションの時代を、シリアスに歌い上げた曲。二十世紀の終りに、ふさわしい曲だ。ビデオ・クリップ用ロケ地、グリニッジ・ビレッジ。
法事ブギ
サザンオールスターズの関口和之さんアレンジ さくらももこさんが好んでくれた楽曲
子供の頃、放課後、せっかくみんなで、カンケリをしようという約束が決まったというのに、「オレ、今日、親戚のオバチャンが来てるから帰るわ。」と言った奴に対して、「こいつは、何て軟弱なヤツなんだ!」と幼な心に思った記憶がある。僕の中では、親戚や、法事を理由に、帰るなんて、とんでもない!という価値感があったんだろうな。学校から帰って来て、玄関に見慣れない履き物を発見した時は恐怖だった。フスマを開けると矢継早やに質問に逢う事は目に見えているのだ。親戚の前で、照れている自分の姿は恥しかった。もちろん今でも恥しい。あっ親戚……。
関口さんと面と向って坐っているのも恥しいな。
★法事ブギ 牧歌的な雰囲気の中に、日本の村落共同体因習を鋭く告発する衝撃の問題作。テーマ・リフレインが「法事」から「親戚」へスライドするアクロバットがみごとだ。ロケ地、チャイナ・タウン、もやし工場。
生物・漢字フラメンコ
正確にはフラメンコではなくサルサとしたかったのですが 当時まだサルサという概念が浸透してなかったのでフラメンコとしました
いやはやスゲエ!!アレンジをしていただいた竜崎孝路さんは、主に演歌を手がけている人で、五木ひろしさんの「長良川艶歌」などで有名な方で、前のアルバムでは、「私はバッテラ」のアレンジをお願いして、完全に脱帽してしまったのだけど、もともと、ラテンの出身の人らしく、当日も、ラテンをやらせたら日本一!というメンバーが集まってくれました。とにかく「ホンモノ」です。
生物の専門用語と、漢字のへん、かんむり、つくり、の発音が、どことなくスペイン語に聴こえるなあ、という動機で作ったこの曲。ライブではギター一本でやっていたのですが、ここまで「ホンモノ」に近付けるとは思いませんでした。oh!ミトコンドリーアー!
★生物・漢字フラメンコ 無意不明な言葉の数々が、言語の限界を越え、チョムスキーとソシュールの空白をみごとに埋めている。ロケ地、ソーホー。
歯
高石友也さんアレンジでスタジオでワイワイ録音しました
大阪弁はおもしろい。歯のことを、普通は「ハ」と発音するのだが、大阪弁で発音すると、「ハァー」という事になる。同様に、目の事は「メェー」と発音するし本当におもしろい。
高石ともやさんは、トライアスロンに向けて、目はギラギラのトレーニングの最中に、この曲のテープを聞き、戦意を喪失しなかっただろうか?
レコーディング当日は、レースも終ってて、スタジオはワイワイガヤお祭り騒ぎ。本当に楽しい雰囲気の曲になりました。どう考えても、この曲はブルーグラスしかないと思います。少し懐しい感じのする楽しい曲です。
★歯 西部開拓時代、人はこのような生活をしていたと思われる、ウエスタンの名曲。ロケ地、ナチュラル・ヒストリー博物館。
人が仕事をしてるのに
難波弘之さんが 大袈裟にアレンジして下さいました
考えれば考えるほどが腹が立ってくる。人のSEXほど、気になるモノはない。ホラ、今、この瞬間も、どこかで誰かが、なんて考えていると、自分がいとおしくて、いとおしくて。
★人が仕事をしてるのに フォークの伝統を正面から引き受けたプロテスタントの傑作。胸につきささる言葉の数々。ロケ地、5番街路上。
街角
大御所 若草恵さんが しとやかにアレンジして下さいました
街角には様々なドラマがある。街角の様々なキャラクターや、変な看板を見つつ歩いたりするのは、嫌いじゃない。この歌に登場する以外にも、道路工事の、ヘルメットをかぶった人は、今日も謝っているし、佐川の飛脚は今日も走っているし、小僧寿しの小僧さんは今日も低姿勢だ。
大阪の道頓堀は、キャラクターの宝庫。カニ道楽のカニ、えび道楽のえび、食い倒れの人形、ネオンのひと粒300mのオッサン。これらのキャラクターが、一勢に動き出したら、街はパニックになる事間違いない。
★街角 哀しみのスロー・バラード。対象への愛に、おもわず胸が熱くなる。ロケ地、ヒグチ薬局前。
電光石火のスケベー
パール兄弟 窪田晴男さんアレンジのカッコイイサウンド
居るのよね、こういう奴。僕は、今から、5年前に、南の島ヨロン島でワン・シーズン、バイトをしていた時、まわりのあまりの乱れ具合を真のあたりに見て、「オレは基本的に、それほどスケベーな人間じゃないな。」と思った事を、公言しておきましょう。
スケベーは、持って生まれた性(サガ)です。こういう奴は、どこにも必ず居るモノなのです。理性と性欲の間で我々がユラユラ揺れ動いている間に、電光石火のスケベーは、あっという間に女を手なずけてしまうのです。雪之丞さんのバンドのメンバーが、完璧にロックしてくれました。
ちなみに、この曲のモデルは、照明のマッちゃんです。という事だけ、付け加えておきます。
★電光石火のスケベー ドラマティックな構成と編曲のなかに、スケベに対する憎しみが、にじみでている。ロケ地、ディスコ、ライム・ライト。
三色パックの謎
元スペクトラムの兼崎ドンペイさんの 渋いアレンジ
「私はバッテラ」にはじまった一連の、食べモノシリーズ。まさか、フリカケで、2コーラス出来るとは思いませんでした。音は完全にブルース。関西出身の知る人ぞ知るといった渋いメンバーです。もう涙が出そう。
みんな知ってるけど、けっしてメジャーじゃない三色パック。いろんな人に聞いてみたのですが、どこの家庭でも、やっぱりゴマシオは残ってしまうそうです。日本中の家庭が、週に一度は赤飯を炊けば、この「ゴマシオだけ残る問題」も解決するのではないでしょうか。「週に一度はめでたい事を!」というキャッチフレーズを掲げて、国民のみなさんにおおいに頑張ってもらいたいものです。
★三色パックの謎 現在問題の…いじめを、三色パックの姿をかりて歌い上げた鎮魂歌(レクイエム)。ごましおに涙する人も多いだろう。ロケ地、ハーレム。
キャッシュ・カード
元サザンオールスターズのギタリスト 大森隆史さんのサウンド
列の選択を間違えるとエライ目に逢う。キャッシュカードに限らず、切符の自動販売機なんかでもそうだ。どの列を選ぶか、これはバクチだぞ。オバアサンや、OLのうしろに並んだ為に、消えていった時間を、一体、誰が返してくれるというのだ!
ヘヴィメタルの人は、イライラしていると思う。握りこぶしを振りあげ、汗まみれになってリズムをとる観客もかなり怒っている。キャッシュカードの列に並び、イライラしている人が全員握り拳を振りあげ「まだか!まだか!早く!早く!」なんてリズムをとりながら並んでいたら、仲々シュールだ。
★キャッシュ・カード タイトなドラムで始まるビート・アップ・ナンバー。日頃、誰もが感じている苛立ちと怒りを、みごとに歌い上げている。嘉門さんの限界一杯の低音も魅力。ロケ地、ウォール街、アメリカン・バンク前。
ユカイなモッコリ
シングルで切りましたが 結果は肩透かし モッコリ風船大量に作って 渋谷公園通りを行進しました
男の子なら誰でも、体育の時間、ジャージの前がモッコリして恥ずかしかったり、水泳の時間、友達のモッコリと自分のモッコリを、無意識のうちに比べていたりした経験があるはずです。女の子も、口には出さないまでも、男の子の股間のフクラミは、一体どうなっているのだろう?と、横目でチラッとかい間見ては、心の中で「ウフッ」なんて思った経験ってあるでしょ。
僕らの潜在意識の中で、けっして憎めない存在「モッコリ」が、「ニッコリ」笑ったら本当にユカイだろうなぁーと、単純に思った事を、童謡チックにまとめてみました。
アレンジは、「ツッコミ・ドレミファドン」「ペンション」でお馴染みの戸田誠司さんです。
★ユカイなモッコリ 愛すべき小品。NHKの「みんなの歌」のためにつくったと思われる。登場する日も近いだろう。ロケ地、近代美術館。
シンキウソウホ
サザンオールスターズ 野沢毛ガニさんにアフリカンなアレンジしていただきました
トゥレクンダのステージを見てひらめいたのがこの曲だ。
まあ、曲と言えるほどのモンじゃないかもしれないが、歌詩の裏には、キツメのかくし言葉あり。
★シンキウソウホ 人はこの曲から何を感じるだろうか。僕は思わず'60年代の、あの熱い季節を思い出した。ロケ地、サウス・ブロンクス。
日常
難波弘之さんの壮大なサウンド 内容は昭和を感じます
'85年の秋あたりから、妙に「日常」という言葉が気になり出し、頭にひっかかりはじめた。そして、何の変テツもない「日常」という言葉にこだわりはじめ、今では愛さえ感じつつある。アルバムのタイトルと、本のタイトルを「日常」にしたのも、そういったこだわりからなのだ。少々、地味な感じもするこのタイトル。しかし、実に奥深く、素適な言葉だと思いませんか?
アルバムのテーマ曲にふさわしく、実におごそかなカンジに仕上りました。嘉門達夫は、これからも、「日常」を追求し続けるつもりです。
★日常 説明するまでもないだろう。人は、この言葉の数々に深くうたれ、そして絶望するだろう。そして、メロディーが、希望へと優しくさそう。ロケ地、自由の女神。
[以上がアルバム「日常~COME'ON 超B級娯楽音楽~」でした]
アホが見るブタのケツ・2
ユカイなモッコリのB面
タンバでルンバ
丹波哲郎さんに許可をいただき 霊界を歌いました シングルジャケットは相原コージさん 演奏はTOPS
ウシ
「もしも」の世界を拓郎さん風に サビ前にさりげなく「牛乳石鹸」のCMサウンドっぽいのが
各曲の1段落目は今回のコメント、2段落目以降は当時のブックレットより(★印は鴻上尚史さんの解説)